Are you happy?】

 

Trrrrrrr Trrrrrrr Trrrrrrr Trrrrrrr

 

居ないのかなぁ?

 

Trrrrrrr Trrrrrrr Trrrrrrr Trrrrrrr

 

うーん、やっぱり居ないのかなぁ?やっぱり運が無いのかなぁ?

 電話も繋がらないし・・・。あーあー。

 

プツン。諦めて受話器を置くと

今日はレポートをまとめるから、一日お部屋に居るって言ってたのになぁ。

と残念そうに声をあげた。

 

そのままベッドに横たわり

寒いなぁ。

一言洩らし、ずるずるとベッドに潜り込んだ。

 

幾ばくかの時間が経ったのか、枕元の電話が鳴っていた。

 

はにゃ、いつのまにか眠ってたよ。

そう言って、受話器を取ると、

もしもし。

相手に答えた。

 

『美幸、さっき電話くれた?』

 

あー、良かった。繋がったよ〜。

心の中で嬉しい悲鳴をあげる。

そう、さっき電話したんだよ。でも、やっぱり”羅王は寝て待て”だねぇ。

 

向こうの電話から、ずっこける気配がした。

『それを言うなら、”果報は寝て待て”だろう?って寝てたの?』

 

うん、寝てた。朝から何度も電話してるのにちっともつかまらないんだもん。

 

『ごめん。今日、大晦日だろ。込まないうちに買い物とか、済ませておきたかったからさ。」

 

そうなんだ〜。今日は一日レポートって言ってたから、何か有ったのかと思ったよ。

 

『それで、何か用だったの?』

 

うん、明日なんだけどさ。忙しくなかったら、お出かけしようよ〜。

と言い切る前に、相手が遮った。

 

『ごめん、テレビでそろそろ抽選始まるんだ。チェックしたいからさ、また後でな。』

そのまま、電話が切れた。

 

あ〜、大事なとこで・・・。やっぱり美幸って不幸。

ぐっすんと鼻を鳴らすと、またもやベッドにもぐりこんだ。

 

もう、明日は一月一日、美幸の誕生日なのに。

愚痴を洩らしながら、そのまま眠り込んだ。

 

○○○○○

 

再び、電話の呼び出し音で目を覚ました。

受話器を取る前に、時計に目をやる。

はにゃー。もう、こんな時間だよ〜!

時計は、22時をまわっていた。

 

もしもし。

 

白雪です。寿さん?

 

あ、美帆ちゃん?美幸だよ。

 

寝てらしたんですか?声が眠そうですけど。

 

うん、今日はちょっと一日眠ってたみたいだよ。”覇王は寝て待て”だからさ。

 

は?

美帆は一瞬、何の事だか分からず戸惑ったが、いつもの事だからか、そのまま続ける。

突然ですが、特に御用が有りませんでしたら、二年参りに出かけませんか?

 

はにゃ、二年まわり?それって楽しい?なら、お出かけするよ〜。

 

二年参りなのですが。では、30分後に駅で宜しいですか?

 

うん、分かった。ちょっと遅れるかもしれないけど待っててね。

 

お待ちしております。では、のちほど。

そこで、電話が切れた。

 

美帆ちゃんて、いっつも丁寧な言葉遣いだなぁ

 

寝過ぎで痛い頭を治す為、シャワールームへと向かう。

つ・め・た・い〜〜

いつもの不幸か、お湯が出ない。氷かと思われるほどの水が肌を刺す。

風邪引いちゃうよ〜

急いでシャワーを止めると、バスタオルで体を拭く。

髪を乾かそうと、ドライヤーのスイッチを入れるとまたもや不幸が襲った。

ボッカ〜〜〜〜〜〜ン

ドライヤーが爆発した。

はにゃ〜〜〜〜〜

さすがにテンションが下がってくる。

縮れてしまった髪を直すために化粧品の棚を探すが、見つからない。

もう一度シャワーを浴びる気にもならず、キッチンの魔法瓶に目を付ける。

洗面台にお湯を満たし、髪と顔を洗う。

?何だかネバネバする〜?

 

「美幸〜、魔法瓶知らない?」

キッチンから母の声がかかった。

 

今、顔を洗うのに〜、お湯、もらってる〜。

顔を洗いながら、大きな声で答えた。

 

「え〜?それ、正月のおせちのお豆が入ってるのよ〜。」

 

美幸から声にならない悲鳴が上がる。

 

毎年、そうやって作ってるのを知ってるでしょう〜。

母の声がさらに追い討ちをかけた。

 

○○○○○

 

寿さん、まだかしら?

美帆は、待合せ場所で、約束した時間からかれこれ10分ほど待っていた。

遠くの方で、ざわめきが起きている。どうやら待ち人が来たようだ。

 

美帆ちゃん、お待た〜

すっかり疲れ切った声が美帆にかかった。

 

寿さん、いつもよりお早かったですね。

美幸の惨状を見ても、少しも慌てず、美帆は答えると

それでは行きましょうか?

先を急ごうと促した。

 

うん、美帆ちゃん。行こう、行こう!

無理矢理テンションを引き上げると、目的地へ向かって歩き始めた。

 

今日はここに来るまで、3つくらいで済んだのですか?

美帆はさらっと質問する。

 

5つだよ。家で3つ。外に出てから2つ。

 

あら、そうなんですか?このくらいの遅れから考えると多いですね。

あくまでにこやかに、美帆は言った。

 

今年最後の突き落としだよね〜。

 

突き落とし?それで、どんなことがおありでしたのでしょうか?

訝りながらも、平静に美帆は続ける。

 

道路で転んだら、脇を走っていたトラックから荷物が落っこちてきて〜、

 その下敷きになったら、その荷物に誰かの煙草の火が引火して・・・

 

まあまあ、良くご無事で・・・

 

その荷物が全部燃えた所で泥水を浴びて・・・で、

 それが外に出てからの一つ目なんだけど〜。二つ目は・・・

 

もう、良いです。これ以上聞くと心臓が持ちそうにありません。

さすがの美帆も、このアクシデントはきつく、話を遮った。

 

そ〜お〜?じゃあ、やめる〜。

 

その時、急に美帆は、行き先を変更した。

こちらから参りましょう、寿さん。

 

どうしたの、美帆ちゃん?

 

いいえ、そちらから行くと今日六つ目の不幸に近づきそうな気がしたものですから。

 

そうなんだ〜。いつもありがと、美帆ちゃん。

 

これくらいのことは、何でも有りませんよ。

 

鳥居をくぐり、二人は境内に入った。

既に、多くの人が二年参りに来ており、雑然とした様相だった。

 

そろそろですね。

美帆は、隣を歩いているはずの美幸に声をかけた。

だが、返事は無かった。

寿さん?

 

○○○○

 

美帆ちゃん、どこ〜?

いつのまにかはぐれてしまった美幸は、大きな声で叫んでいた。

はにゃ〜、まただよ〜

 

ゴォォォォォォーン。

どこからか、除夜の鐘の音が響き始めた。

 

美幸は一人ぼっちでその音を聞いていた。

ふらふらと辿り着いた、池の前で座り込んで。

 

美幸ってば、こんなところで何やってんだろ?

寒さで体中が冷たくなってきていた。

何よりも心の芯が寒かった。

 

「おーい、美幸〜、どこだ〜?」

微かだけれど、遠くからその声が聞こえてきた。

鐘の音にかき消されそうなほど小さくはあったが、確かに聞えて来た。

 

美幸は立ち上がると、その声の方へと歩き始めた。

先ほどまでと大して明るさは変わらないはずなのに、

なぜか10倍くらい明るくなったような気がした。

 

○○○○○

 

「美幸、心配させるなよ。白雪さんから連絡が入って驚いたんだぞ。」

 

ごめん。

 

「それで何とも無いか?」

 

うん、だいじょーび、だいじょーび。

 

「ついでに、俺もお参りしていくかな?美幸は、もうしたんだろ?」

 

ううん。まだだよ〜。

 

「じゃ、一緒にするか?」

 

うん。

 

○○○○○

 

「おみくじも引いていくか?」

 

美幸はいいよ。どうせ決まってるし。

 

「何だって良いじゃん、ほら引こう。」

 

う、うん。

 

二人して、おみくじを引く。

 

「俺は、吉だよ。美幸は?」

と、美幸の顔を見ると、聞くまでも無く分かった。

 

「やっぱり・・・か?」

 

うん。でも・・・

そこでパッと明るい顔をして

大凶でも、あなたと二人でこんなに幸せなのに、

 大吉だったりしたら、逆に美幸、罰が当たっちゃうよ〜

そう言って笑った。

 

それに〜美幸、大吉はもう充分だもん。

そういっていつも肌身離さず持っているお守りを握り締めた。

 

「それ、もしかして子供の頃の?」

 

うん、そう。美幸、あなたと会った時、初めて手にした大吉のおみくじで

 絶対幸福になれるって信じてたもん。

 

「・・・そうか。あ、美幸、こっちこっち。」

急に方向転換すると、美幸を手招きする。

 

目の前の鳥居と見比べて

出口〜、こっちだよ〜

 

「いいから、こっちへ」

今度は手をつないで美幸を連れて行く。

 

しばらく歩くと駐車場に出た。二人は一台の車の前まで歩く。

「ほら、これ。」

 

これがどうかした〜?

 

「美幸は自分のこと、不幸を招くって思ってるだろ?

 でもこれは、美幸が選んだ宝くじが当たって買ったんだぜ。

 さすがに換金前だから、実際は親に前借して中古で買ったんだけど。

 それから・・・」

うしろのドアを開くと包みを取り出し、美幸に渡す。

「お誕生日、おめでとう。そして、あけましておめでとう。」

 

目をまん丸にしたまま、美幸はしばらく声が出なかった。

 

ありがとう〜。美幸〜、とってもとっても嬉しいよ〜。

 

「じゃあ、乗って。初日の出を観に出かけよう。」

 

うん。

と言いつつ、車に乗らない。

 

「ほら、乗れって。いつまでもそこにいちゃ、寒いだろ?」

 

ううん、美幸、と〜ってもあったかいよ。

そう言って、後ろの窓に近づく。

その窓は、外気のせいですっかり氷が張ってしまっていた。

ほら、その証拠を見せてあげるよ〜。

そう言うと、その窓に、ほ〜っと息を吹きかけた。

見る間に、冷たい氷は溶けて行く。

美幸の心の中の氷と同じように、すっかりと・・・。