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LittleWing120000HIT&田村ゆかり様「AIR」出演決定記念寄稿
『ちるちるメイ様』 第2話
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翌日…
みちるは、海岸に接する防波堤沿いの道を、てくてくと歩いていた。
時間は、午前8時前だというのに、真夏の太陽が、地面を焼くようにギラギラと
照りつけている。
気温は、すでに30度近くに達しようとしているのであるが、みちるにとっては
さほど苦にならない暑さだ。
海からの潮風を全身に受けながら、軽い朝の散歩を楽しんでいるのであった。
やがて、海岸から外れると、こじんまりとした漁港へと辿り着く。
このあたりは、漁協の魚市場を中心に、数件の民宿や雑貨屋などが建ち並ぶ
小さな町の中では、比較的にぎやかな場所である。
特に、今の季節は、学校が夏休みということもあり、朝から、水着やクーラー
ボックスを抱えた家族連れが行き交い、雑貨屋の店先には、色とりどりの
浮き輪が並び、その前では、簡単な屋台をつくって、店のおばちゃんが、ガス
コンロで、ハマグリやらイカの浜焼きを焼いていた。
それらの様子を、みちるは、面白そうに見ながら通り過ぎる。
そして、賑やかな通りを抜け、漁港の外れまで歩いていったとき…
一軒の民宿の軒先に、みちるの見知った顔があるのを見つけた。
『伊集院メイだっ! こんなところに泊まっていたのかぁ…』
昨日知り合ったメイが、軒先に腰掛けて、ノートのようなものに、何かを
書いている姿が見えた。
その姿を、道路から垣根越しに、観察してみることにする。
メイは、さらさら…と、まじめな顔で書いているかと思えば、時々、急に
「くくくっ」と自分で書いたことにウケているように、ニヤニヤと笑ったりして
見ていて飽きなかった。
『やっぱり、面白いヤツ…』
メイのそんな仕草を、しばらく楽しんで見ていると、「朝食の用意ができまし
たよーっ!」という声が、民宿の奥から聞こえてきた。
その言葉に反応するように、メイは、ノートから顔を上げると、ばばっと
声のした方向へ、走っていった。
『食い意地張ってるヤツだなぁ〜 あれで大財閥の令嬢だっていうんだから
世の中分からないもんだね。それに…』
と、メイの宿泊している民宿の建物を見る。
網元の家なのだろうか、古くて大きな、二階建ての旧家だ。
しかし「一泊二食 三,五○○円」と看板に書かれている通り、メイのいう大財閥の
令嬢が宿泊するには、いささか庶民じみた感じがある。
そのあたりに、ちぐはぐな感じを受けながら、みちるは、先ほどまで、メイが
座っていた軒先に目を戻す。
そこには、メイが置き忘れていった、ノートらしきものが、一冊、おきっぱなしで
放り投げられていた。
「―――――」
みちるは、そのノートに、急に興味を覚えてきた。
メイが、にやけながら書いていたところを見ると、相当、面白いことが書かれて
いるのだろうと思い、読んでみたくなってきたのだ。
みちるは、読みたいという誘惑に負けて、垣根を乗り越えて民宿の庭に忍び込むと
軒先の前に、置きっぱなしになっているノートを手に取ってみた。
“ジャポニカ絵日記帳”と書かれた、市販されている絵日記帳だった。
どうやら、メイがにやけながら書いていたのは、夏休みの宿題かなにかで出された
絵日記だったらしい。
みちるは、興味津々で、早速ページをめくってみた。
日記は、今年の4月1日から始まっている。
4月23日 くもり
またぎゅうにゅうをこぼした。そしたら、はなしができた。いつもおこって
くれた子。
なまえがわすれたけど、やさしい子だった。
4月24日 はれ
ともだちができた。ともだちになろう、ていってくれた。みあっていう子。
きのうはなした子。少しだけ学校へいくのがいやじゃなくなった。
4月27日 はれ
みあときゅうしょく食べた。ぜんぶ食べられた。おいしくないのも忘れて
しまうほど、みあがしゃべったから。
4月30日 はれ
みゅーっ♪
「ううぅ… 伊集院メイって、なんて可哀想な… でも、みあっていう友達が
できて本当によかったーーーっ!」
と、感動のあまり、みちるは思わず目頭が熱くなってしまった。
しかし。
「…って、これは、繭の日記だろうがーーーーーっ!!」と、元ネタに
気づいたみちるは日記に向かって、思わずツッコミをいれてしまった。
それにしても、何故に、人様の日記が、メイの絵日記に書かれているのだろうか?
そんな疑問を感じながら、みちるは、他の日付をめくってみる。
5月5日 はれ
今日、遊園地で、あこがれのあの人を見つけた。
いつものように、ぶつかったふりして、身体を当ててみてら、ごぎっという
嫌な音がして、あの人が、口から泡を吹いて倒れてしまった。
当てどころが悪かったのかな?
今日はちょっと失敗だったけど、これからの、あの人の秘密は、全部暴い
ちゃうから♪
あの人のハートに、チェキよっ!
5月15日 あめ
長年の研究の末、ついに『真・世界征服ロボ』が完成した。
これで、世界は私の手中に収まったも当然。
しかし、気になるのは、隣国で開発された先行者だ。
あの軍事兵器を倒さねば、私の野望は達成できないであろう。
世界征服には、まだまだ時間がかかりそうだ。
6月1日 くもり
はぁ… どうしてボクって、人気ないんだろう…
やっぱり、ガラの悪いお兄ちゃんがいることに、原因があるのかな?
ううん、お兄ちゃんのせいじゃないよね。ボクが、かわいくないからなんだよね。
そんなわけで、ボクも、かわいくなって、人気者になろうと思う。
先ずは、たいやき屋さんで、アルバイトしてみることにした。
それから、困ったときは「うぐぅ」と言ってみることにしよう。
「うぐぅ… ボク、あゆあゆじゃないもん」
あ、かわいい。結構いけるかも?
この前は、ワッフル食べながら「嫌です」って言って、失敗しちゃったけど
今度は大丈夫そうだよ♪
6月20日 くもりのちあめ
最近の王子様は、私の胸ばかり見ています。
ひょっとして王子様は、私を…
やっぱり、王子様も年頃の男の子だから… でも、私、迫られたら、どうすれば
いいのか分かりません。
妖精さんに聞いても、教えてくれないから、今度、占ってみることにします。
それにしても、最近、妹の真帆の胸が、どんどん大きくなっています。
それを見ていると、なんだかとっても焦りを感じます。
7月1日 はれのちぶいさいん
リーフファイトで、またしても、ちょっとさんに負けた。
お、おのれ、ちょっとさん!
どうやら、狩猟者の私を、本気にさせてしまったようですね。
この借りは、次回のTDC杯で、のしつけて返してやります。
長年の研究の末開発した、千鶴デッキによる、勝利の方程式を披露して
さしあげましょう!
そう… この千鶴デッキ『鬼神楽』で!!
偽善者は、ちょっとさんの血を欲しているんですよ… ふっふっふ…
【筆者注】一部、不適当な日記がありますこと、ネタということで、ご容赦
くださいm(_ _)m
それから、誰がどの日記か、全部分かった人、表彰します(^^)
☆☆☆
「うぬぬ… 伊集院メイ、あなどれない…」
ここまで徹底して、他人の日記を書き続けたメイに、呆れるのを通り越して、
畏敬の念さえ覚えてしまった。
なんというか、ちょうど、読書感想文の宿題を忘れて、クラスメイトの原稿を
丸写ししたような、そんな感じがする。
もし、メイが、本当に日記を丸写ししているとしたら、休み明けにに修羅場が
待っているだろうな… などと、みちるは思った。
『それにしても、伊集院メイが、自分でちゃんと書いた日記は、ないのかなぁ〜?』
そう疑問に思い、みちるは、ぱらぱらと、ページをめくってみる。
すると、昨日の日付の日記で、ようやく、パクリではない、メイが自分で書いた
日記が見つかった。
7月21日 はれ
きょうは、にょめにょめって話す、変なともだちと、いっしょにシャボン玉で
あそんだ。
にょめにょめは、シャボン玉が下手で、一つも飛ばすことができなかったけど
メイは、とっても大きなシャボン玉を、たくさん飛ばせた。
メイのシャボン玉は、大きすぎて、にょめにょめがシャボン玉の中に入って
しまった。
それを、ぱちんって割ってみたら、にょめにょめが「にょめれっちょ〜」と
大きな声でさけんで、それから「うにゅ〜 こうさん〜」っていった。
きょうも、メイの勝ちなのだ♪
その日記には、さらに、シャボン玉に閉じこめられて、目をバッテンにしている
みちると。何故か、恐竜のきぐるみを着たメイが、口から、シャボン玉を吐いている
絵が描かれていた。
「バブルボブルかーーーーーぁ!!!」
さっきよりも、さらに激しく、絵日記に向かってツッコミを入れてしまった。
ニヤけながら書いてたのは、このことだったのかぁーーー?
しかも、みちるのこと、にょめにょめなんて、謎の生物にして、シャボン玉が
飛ばせたなんて、うそ書いてるしーーーっ!!
と、みちるは、そんな風に、心の中で、ありったけ毒ついてやった。
「伊集院メイ! 後で絶対お仕置きしてやるーーーーーっ!」
決意を新たに、そう叫ぶと、みちるは、メイの絵日記帳を、バタっ!と、乱暴に
閉じて、もとあった場所に放り投げた。
しかし…
投げ出された日記帳に、みちるは、ふと、妙な違和感を覚えて、再びそれを手に
取ってみた。
さっき手に取ったときも、ちょっとした違和感みたいなものを感じたものの、
そのまま中を開いてしまったため確認できなかったが、それを、今度はちゃんと
確かめようと思ったからだ。
「―――――」
日記帳の表紙を、じっと見てみる。
すると、みちるの感じていた違和感が、なんであったのか、すぐに分かった。
「!!!!!」
それを確認したみちるは、驚きのあまり、しばらく声が出なかった。
しばし呆然と、その場所に立ちつくす。
やがて、みちるの手元から、日記帳がするりと手から落ちた。
「ウソだ…」
とても信じられないといった面もちで、みちるは、そんなことを、何度も呟いた。
みちるが驚いたのは、日記帳の表紙に書く、名前の欄だった。
そこには、本来なら“伊集院メイ”と書かれているところに、全く別の名前が
書かれていたからだ。
そして、その名前は、みちるのよく知った人物の名前であった。
☆☆☆
その日の午後…
みちるは、昨日と同じように、廃線となった駅の広場で、シャボン玉を飛ばしていた。
「ふうぅ…」と、ストローから空気を入れても、相変わらず飛んでいかない。
いや… 今日はいつもよりひどいかもしれない。
今朝のことが頭から離れず、どうしても、シャボン玉に集中できないからだ。
それでも、シャボン玉遊びを続けていると
「来てやったのだっ! 今日こそは、キサマをうち負かしてやるのだっ!」
と、約束通り、メイが不敵な笑みを浮かべながら、やってきた。
「昨日は、安物のストローとシャボン玉液だったから、うまく飛ばせなかったのだ。
そんなわけで今日は、伊集院家特製の、スペシャルストローと、シャボン玉液を
持ってきたのだ!!」
そう言って、手に持った、ストローとシャボン玉液を、みちるに、これ見よがしに
見せつける。
「―――――」
やる気満々のメイとは対照的に、みちるは、気がない様子で、黙ってメイを
見つめていた。
「どうしたというのだ? メイの雄姿に、おしっこちびっちゃったのか?」
「―――――」
「うにゅ〜降参〜なのか? キサマ、やっとメイの実力がわかったと申すのか?」
「伊集院メイ、あのさ…」
「??? なんなのだ?」
「今日は、シャボン玉するの、やめよう?」
みちるが、そう言うと、メイは、顔を真っ赤にして
「な、なんでなのだ!! メイと、シャボン玉対決すると、昨日約束したでは
ないかっ!」
「うに… そうだけどさ…」
「だったら、すぐに始めるのだっ! 今日のメイのシャボン玉は、ひと味もふた味も
違うぞ!」
そう言って、メイがみちるに詰め寄る。
みちるは、遊びに行く約束を、当日になって反古にされたような子供のように、
とても諦めきれないといった表情のメイを見ながら、先ほどから、ずっと
考えていた、あることを思い切って、提案してみることにした。
「その代わりさ…」
「???」
「その代わり… みちるの親友に、メイのこと、紹介してあげるよ」
「…親友とな?」
そして、みちるは、いつものように無邪気な笑みを浮かべると
「そう、みちるの親友。“美凪”っていうんだよ」
「!!!」
みちるが、“美凪”という名前を出した瞬間、メイの表情が、ほんのわずか変わった。
それは、注意してみないと気づかないほど、小さな変化であった。
「シャボン玉、とっても上手に吹けるし、それに、すっごいおいしく料理も
できるんだよ。
美凪のハンバーグが、みちるは一番好きなんだ〜♪」
「―――――」
「伊集院メイは、美凪のハンバーグ、食べてみたくないのか?」
「―――――」
「びっくりするくらい、おいしくから、ほっぺた落ちるかもしれないぞ〜」
「―――――」
「伊集院メイっ!」
みちるの話を、しばらく無言で聞いていたメイは、今の呼びかけで、はっと
顔を上げて、みちるを見つめた。
「会うのか? 会わないのか?」
「……………」
メイは、しばらくの間、横を向いて思案顔で考えていたが、考えがまとまったのか
みちるの方に向き直ると、いつものように、不敵な笑みを浮かべて
「それでは、キサマの親友に会ってやるのだ。早くメイを案内するのだ」
☆☆☆
みちるに連れられて、メイは、小さな町の住宅街の中にある、美凪の家の前へと
たどりついた。
この家は、平屋建ての、こじんまりとした住居である。
みちるの親友である美凪は、この家に、母親と二人で住んでいた。
「―――――」
みちるは、実のことを言うと、この家に招かれたことが一度もなかった。
理由は、みちるが、この家には来たくなかったからである。
悲しい思いでと、辛い現実しかない、この家に入ることは、みちるにとって
そして、美凪にとっても、辛いことでしかないからだ。
それでも、今日、勇気を振り絞ってきたのは、みちるの隣で、なぜか不安げな
表情を浮かべている伊集院メイに、どうしても、美凪と… そして、この家を
見せてやる必要があると、思ったからだ。
美凪の母親と会うことがなくとも、せめて、美凪がどんなところに住んでいるか
見てもらい、そして、できるなら美凪と“親友”になって欲しい…
そう、みちるは思って、ここに連れて来たのだ。
「ここが、美凪んち〜♪ これから、美凪を呼んでくるからね」
みちるは、自分の緊張をメイに悟られないように、努めて明るく振る舞うと
メイをその場所に立たせて、美凪を呼びにいこうと、玄関の前まで行こうとした。
その時…
遠くから、一台の車が、こちらに向かって走ってきた。
みちるは、エンジン音のした方向に振り向く。
「!!!!!」
みちるは、その車の主が誰か、すぐに分かった。
出来れば会いたくない人… 美凪の母親だったのだ!
とっさのことに、みちるは、メイの手を、がしっと掴むと、そのまま二人で
近くの電柱の影に隠れてしまった。
「き、キサマ、何故隠れたりするのだっ?」
「しー 少し待って…」
そういって、メイを静かにさせると、みちるは、電柱の影から、美凪の家の方を
観察する。
美凪の母親の運転する車は、美凪の家の前に止まる。
すると、中から、美凪の母親が降りてきて、そのまま、玄関の扉を開けると
「みちる、お米を買ってきたから、ちょっと車から降ろすの手伝ってくれないかい?」
と、家の中にいる“美凪”を呼んだ。
「はい。お母さん…」
家の中から、そう声が聞こえると、すぐに、みちるの親友である、美凪が家から
出てきた。
ロングの髪の両脇にリボンを結び、憂いを帯びたような目が印象的な、不思議な
感じのする美人であった。
美凪は、母親と一緒に、車の後部座席に積んであった、大量の米袋のうちの一つを
持ち抱えると、それを家の中まで運んでいった。
それらを、何回か繰り返して、ようやく車の中から、すべての米袋を運び出すと
「これから、お母さんは、ちょっと霧島先生のところに行ってくるから…
帰りは夕方になるから、みちるが出かけるときは、家の鍵を閉めておいてね」
「分かりました…」
「それじゃ、みちる。行ってきます」
「いってらっしゃい…」
美凪の母親は、美凪にそう伝えると、再び、車に乗り込んで、商店街の方へと
車を走らせた。
美凪は、それを見届けると、無表情なまま、家の中へと入っていった。
「―――――」
それらを確認したみちるは、隠れていた電柱の物陰から出てくると、気を
取り直したように「にゃはは…」と、メイに対して笑い
「それじゃあ、今度こそ、美凪を呼んでくるね♪」
と、美凪の家の玄関へと向かった。
しかし…
「その必要はないのだ!!」
みちるの後ろで、メイが、そう呼び止めた。
☆☆☆
「にょわ? どうして?」
その呼び止めに、思わず足を止め、メイの方に向き直る。
「伊集院メイは、美凪のハンバーグ、食べたくないのか?」
みちるは、ちょっと大げさに驚いたような表情で、メイに、そう尋ねた。
それに対して、メイが「ふんっ」と鼻を鳴らすと、嫌らしいまでのジト目で
みちるを見つめる。
「…別に、庶民の食べ物なぞ、興味がないのだ」
「……………」
「だいたい、キサマの親友とは何者なのだ?
まあ、確かに美人ではあるが、なんか暗い感じがして、全然社交的ではないのだ。
あんな陰気な性格では、伊集院家のクリスマスパーティーに呼んでも、呼んだメイが
恥をかくだけではないかっ?」
「……………」
「それに、母親も母親なのだっ!
自分の娘の名前を間違えるなんて、絶対、頭がどうかしているのだ」
そして、メイは、美凪の家を、ちらりと一瞥して
「…だいたい、こんな犬小屋みたいな家に住む下賎な庶民と、メイが付き合えると
思っているのか?
もっとも、メイの力があれば…」
そこまでメイが、一気にまくし立てたとき。
みちるは、右手をおもむろに高くあげ
バシッ!
メイの頬を、平手で強くぶった。
「! …な、なにをするのだ?」
みちるの突然の平手打ちに、メイは、ぶたれた頬をおさえながら、呆然と
そんなふうに聞き返す。
みちるは、生まれて初めて、本気で人をぶった。
じんじんと、メイをぶった右手が痛む。
それでも、目の前にいる、メイが許せなかった。
親友を愚弄したメイが、どうしても許せなかった。
興奮して乱れた呼吸を、すう…っと抑え込むと、みちるは、メイの方へ、きつく
目を向け
「伊集院メイは、いいヤツだと思っていたのに…
いいヤツだと思ったから、美凪に会わせようって思ったのに…
美凪の、ともだちになって欲しかったのに…」
みちるの目には、悔しさからか、うっすらと涙が滲んでいた。
「それなのに、伊集院メイは、そんなことを言うのか?」
「―――――」
「美凪のことも… 美凪のお母さんのことも知らないくせに、そんな非道いこと
言うのか?」
「―――――」
「答えろ! 伊集院メイっ!!」
みちるが、ありったけの声で、メイを非難した。
すると、それまで呆然としていたメイが、突然、怒ったような、泣いているような
表情に変わった。
そして
「キサマだって… キサマだって…
キサマだって、メイの何が分かるというんだーーーっ!!」
そう叫ぶと、メイが急にみちるに背中を向けると、一直線に、どこかへと
走り去ってしまった。
その時、みちるには、メイも同じように、泣いているように見えた。