セリオ「マルチさん、バス停までお送りしましょう。」

マルチ「ありがとうございます、セリオさん♪」

・・・

セリオ「マルチさん。」

マルチ「何ですか?」

セリオ「羽月さんとは、仲良くしていますか?」

マルチ「え?!・・・はい。(*^^*) でも、どうしてそんなことを聞くんですか?」

セリオ「マルチさんが失敗ばかりしているんじゃないかと、長瀬主任は心配しています。」

マルチ「はぅ〜・・・。」

セリオ「・・・どうやらバスが来たようですね。」

マルチ「あ・・・ボールがバスの前に・・・。」

セリオ「ボールを追って、子供が飛び出してくる確率・・・73.1%。」

マルチ「え?あっ!危ない!!!」

キキィィィィィ〜〜〜〜!!!!

・・・・・・

マルチ「はわわわ〜!」

セリオ「・・・。」

マルチ「セ、セリオさん?!」

セリオ「大丈夫ですか?」

子供「う、うん・・・。」

セリオ「ここは車の往来が激しいので、別の場所で遊ぶことをお勧めします。」

子供「うん、ありがとうお姉さん♪」

マルチ「セリオさん、今一体何をしたんですか?」

セリオ「加速装置を使用して、バスよりも先に子供の所まで駆けつけました。」

マルチ「す、すごいです〜!」

セリオ「そんなことはありません。自分に備わっている機能を理解し、
    それを使いこなすことが出来るのなら、難しいことではありません。」

マルチ「私にも・・・出来るでしょうか?」

セリオ「残念ながら、マルチさんには加速装置は備わっていません。」

マルチ「はぅ〜、そうでした・・・。」

セリオ「マルチさんには、マルチさんのやり方で役に立てる事があると思います。ですから・・・」

ポンポン。

セリオ「元気を出してください。」

マルチ「私のやり方・・・ですか?」

セリオ「はい。」

マルチ「でもでも、私もセリオさんみたいに皆さんの役に立ちたいんです!
     私もセリオさんみたいに・・・。」

セリオ「マルチさん・・・。」

 

 

LITTLEWING4周年記念 〜EternalHeart 後編〜

 

 

沙希「みのりちゃん、危ない!!」

みのり「え?」

キキィィィィィィ〜〜〜〜!!!!!

耳障りなブレーキ音が辺り一帯に響き、そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが潰れるような音と共に、ひとつの人影が宙を舞った。

その人影は・・・・・・みのりちゃんと犬を庇うため、トラックとの間に割って入ったマルチだった。

 

羽月「・・・・・・マルチィ〜!!」

 

人間なら即死を免れない程の衝撃・・・しかし、マルチはメイドロボであるため、

幸か不幸か、意識が残っていた。

が、それもそう長くはないことはみんなわかっていた。

それ程に、マルチの体はボロボロになっていたから・・・。

 

沙希「わ、私、研究所に連絡してくる!」

羽月「マルチ!マルチィ!!」

マルチ「・・・浩之さん・・・み、みのりさんは・・・犬さんは・・・」

羽月「みのりちゃんも犬も無事だぞ!だから、しっかりしろっ、マルチ!」

マルチ「そうですか・・・。よ、良かったですぅ〜。」

みのり「ぜ、全然良くないわよ!どうしてこんなになってまで、私達を助けたのよ?!
    そんな・・・自分を犠牲にしてまで・・・。」

マルチ「みなさんのお役に立つことが・・・メイドロボの役目ですから。(^^)
    でも・・・私のろまですから・・・逃げ遅れてしまいました。
    やはり・・・セリオさんのようには行きませんね・・・。」

みのり「っ・・・ばかよ、ホントに・・・。」

マルチ「浩之さん・・・・・・すみません・・・。」

羽月「なんで謝るんだよ・・・。」

マルチ「約束・・・守れなくなってしまいましたから・・・。
    ずっと一緒にって約束・・・守れなくなってしまいましたから・・・。」

羽月「マルチ・・・・・・。」

マルチ「でも・・・浩之さんは一人ぼっちなんかじゃないです。みのりさんも・・・沙希さんもいます・・・。
   だから・・・・・・ずっと・・・元気でいてくださいね。(^^)」

羽月「・・・わかった、約束する。」

マルチ「はい、約束ですぅ。(^^)」

羽月「・・・・・・。」

マルチ「・・・・・・。」

マルチ「楽しかったです・・・。」

羽月「え?」

マルチ「浩之さんに会えて・・・沙希さんやみのりさんに会えて・・・本当に楽しかったです・・・。」

みのり「マルチ・・・。」

マルチ「皆さんと過ごした思い出は、ずっと・・・ずっと忘れま・・・せ・・・

 

プツッ・・・

 

何かが切れるような音と共に、マルチの体は力無く崩れ落ちた。

命を持たないただの人形が、支えを失えば倒れるように・・・。

 

羽月「・・・マルチ?おいっ、マルチ?!」

みのり「いや・・・マルチ、目を覚ましてよ!!」

羽月「マルチィィ〜〜〜!!!」

それから後のことはよく覚えていない。

気づいたときには研究所の一室で、沙希ちゃんとみのりちゃんと一緒にいた。

そしてそこには・・・マルチの姿はなかった。

 

沙希「・・・マルチちゃん、助かるといいね。」

羽月「・・・。」

沙希「・・・。」

みのり「・・・ごめんなさい、羽月先輩。」

羽月「・・・。」

みのり「私のせいで、こんなことに・・・。」

沙希「みのりちゃん・・・。」

羽月「・・・・・・みのりちゃんは・・・悪くないさ。」

みのり「先輩・・・あの、聞いてほしいことがあるんです。」

沙希「聞いてほしいこと?」

みのり「はい・・・。」

羽月「・・・。」

みのり「私・・・小さい頃にも犬を拾ったことがあったんです。」

羽月「・・・・・・今回みたいにか。」

みのり「はい・・・。でも、家では飼うことは出来ないからって、元の場所に戻してくるよう親に言われて、
    泣きながらその子を元の場所に戻したんです。」

羽月「・・・。」

みのり「次の日、その子は段ボール箱の中で死んでました・・・。」

沙希「どうして・・・。」

みのり「前の晩、大雪になったんです。あの子はその寒さに耐えきれずに・・・。」

羽月「それで、今度こそは絶対に助けようと思ったわけか・・・。」

みのり「はい・・・。」

沙希「羽月君とは逆だね・・・。」

羽月「・・・そうだな。」

みのり「逆?」

沙希「羽月君はね・・・昔、飼っていた犬が死んじゃって、その時に凄く悲しい思いをして・・・。
   だから、そんな思いは二度としたくないと思ったの。」

みのり「そうだったんですか・・・。すいません、そうとも知らずに勝手なこと言って。」

羽月「いや、構わないさ。結局、俺が犬を飼うことを了承していれば、
   こんなことにはならなかったんだから。そうすればマルチだって・・・。」

沙希「あまり自分を責めないで。こんなことになるなんて、誰も予測できないよ。
   羽月君は何も悪くないんだから・・・。」

みのり「そうですよ!それに・・・マルチと約束したじゃないですか。ずっと・・・元気でいるって。」

羽月「そっか、そうだったな・・・。約束は守らないとな。」

沙希「うん・・・そうだね。」

 

ガチャ・・・

 

長瀬「浩之君・・・。」

羽月「おっさん!マルチは、マルチはどうなんだ?!」

みのり「助かったんですよね?!」

長瀬「助かった・・・そうだね。ボディの損傷がかなり酷かったから
   すべて取り替えることになってしまったが、その作業も先ほど無事に完了したよ。」

羽月「ってことは・・・。」

みのり「マルチ、助かったんだぁ!」

沙希「・・・ボディの損傷は何とかなった・・・ということですか?」

羽月&みのり「えっ?!」

長瀬「・・・君の言う通りだよ。ボディは壊れても取り替えればいい。しかし・・・。」

羽月「しかし・・・しかし何だよ!」

長瀬「浩之君・・・君はマルチに会うことで、更に苦しむことになるだろう。それでも・・・会うかね?」

羽月「・・・。」

沙希「羽月君・・・。」

みのり「羽月先輩・・・。」

長瀬「別にやめたって構わない。その時は、マルチは私が引き取・・・

羽月「くだらないこと聞くなよ。」

長瀬「・・・。」

羽月「約束したんだ。ずっと一緒にいるって。
    だから、どんな厳しい現実が待っていても、俺はマルチに会う。会わなきゃならないんだ。」

長瀬「そうか・・・わかった。では、ついてきたまえ。」

 

そう言った長瀬主任は、俺達3人を別の部屋へと案内した・・・。

 

長瀬「この部屋にマルチはいる。心の準備はいいかね?」

羽月「・・・ああ。」

沙希&みのり(こくっ。)

長瀬「では、入りたまえ。」

 

ギィィ・・・

 

扉を開けると、そこにはマルチとセリオがいた。

しかし、マルチはこちらを向いていないため、表情がわからない。

 

セリオ「羽月さん、お待ちしておりました。」

羽月「セリオ・・・マルチは・・・。」

セリオ「マルチさん、あなたのご主人様です。」

マルチ「ゴシュジンサマ・・・。」

 

セリオに促され、マルチはこちらを向いた。

しかし、その彼女の瞳には光が宿っておらず、感情というものをまったく感じなかった・・・。

 

マルチ「ゴシュジンサマノ ナマエヲトウロクシマス。ナマエヲ ニュウリョクシテクダサイ。」

羽月「マル・・・チ?」

沙希「そんなことって・・・。」

みのり「ど、どういうことなんですかっ、虹野先輩?!」

セリオ「データが消えてしまったのです。」

みのり「データが・・・消えた?」

セリオ「人間は呼吸が停止した場合、仮にその状態から蘇生したとしても
    その呼吸をしていなかった時間の長さによっては、脳に異常をきたすことがあります。
    それは、脳に酸素が行き渡らなくなるためなのですが、
    私達メイドロボも、電力が供給されなくなればデータの消去という事態を招いてしまいます。
    普段は、予備電源やデータのバックアップによってそのような事態を避けるよう設計されている
    のですが、マルチさんの場合、そのどちらもトラックとの衝突時に破壊されていました。」

みのり「それじゃあ・・・今のマルチは私達のことも・・・。」

沙希「覚えてないでしょうね・・・。」

 

浩之さんに会えて・・・沙希さんやみのりさんに会えて・・・本当に楽しかったです・・・。

 

みのり「そんな!そんなのって・・・あんまりですよ。」

羽月「なるほど・・・確かにこれはかなり厳しいな・・・。」

長瀬「浩之君・・・すまない。科学とて万能ではないのだよ。失った物を取り戻すことは・・・出来ない。」

羽月「失った物は・・・また作っていくさ。マルチはここにいるんだからな。」

マルチ「ゴシュジンサマノ ナマエヲトウロクシマス。ナマエヲ ニュウリョクシテクダサイ。」

羽月「今日から俺が、お前のご主人様だ。名前は・・・羽月 浩之。」

マルチ「ナマエ オヨビニ セイモンヲトウロクシマシタ・・・。」

 

キュイィィィン・・・

 

マルチ「はじめましてご主人様♪私は、HMX−12、通称マルチといいます♪(^^)」

みのり「?以前と同じように見えますけど・・・。」

長瀬「マルチには量産型のHM-12とは違い、人格プログラムが組み込まれていて、
   先ほどの読み込み音がそうなんだが、ユーザー登録後にインストールするのだよ。
   だから、見た目は以前となんら変わりないはずだ。
   ただ、それはあくまでも表面上の話であって、過去のデータから導き出される感情ではない。
   今のマルチの微笑みは、作り笑いに過ぎないのだよ・・・。」

沙希「羽月君には、凄く辛いでしょうね・・・。」

羽月「・・・はじめまして、マルチ。」

マルチ「これからよろしくお願いします。(^^)」

羽月「ああ・・・これからはずっと一緒だ。」

マルチ「ずっと・・・一緒ですか?」

羽月「ああ、それが俺とマルチとの約束だからな。」

マルチ「・・・約束・・・ずっと一緒・・・」

長瀬「ん?どうしたんだ、マルチ?」

マルチ「ご主人様と交わした約束・・・・・・」

 

キュイィィィィィン!!!

 

みのり「な、なんか様子が変じゃない?!」

セリオ「何らかのデータを、猛スピードで読み込んでいます。」

沙希「何らかのデータって?」

セリオ「私にもわかりません。」

長瀬「馬鹿な。今のマルチには、基本データと人格プログラム以外は何も入ってないはず・・・。」

羽月「マルチ!おい、しっかりしろっ!」

マルチ「・・・あ。」

セリオ「読み込みが完了したようです。」

羽月「マルチ、大丈夫か?まだどこかおかしいんじゃ・・・。」

マルチ「浩之さん?あれ?私、どうして研究所に・・・。」

沙希「浩之さん・・・って、マルチちゃん、もしかして・・・」

マルチ「あっ、沙希さんにみのりさんまで。皆さんお揃いでどうしたんですか?(^^)」

長瀬「まさか・・・データが復旧したのか?」

羽月「どうしたんですかって・・・お前がトラックにはねられたから、みんな心配して集まったんじゃないか。」

マルチ「トラックに・・・あっ!みのりさんと犬さんは・・・

羽月「馬鹿野郎!!!」

マルチ「はうっ!」

ぎゅっ・・・。

羽月「人のことよりもマルチ・・・お前が一番ヤバかったんじゃないか。」

みのり「まったくよ・・・。私達の心配よりも、自分の心配をしなさいよ。」

沙希「でも、みんな無事でホントに良かったね♪」

マルチ「みなさん・・・ふ・・・。」

羽月&沙希&みのり「ふ?」

マルチ「ふえぇぇぇ〜〜〜ん!!(ToT)」

羽月「い、いきなり泣く奴があるか!」

マルチ「だって、だってぇ、本当はすごく怖かったんですぅ。目の前がだんだん暗くなって、
     浩之さんの顔も見えなくなって、それから、それから・・・」

羽月「もういい、マルチ。それは全部夢だったんだよ。悪夢は・・・終わったんだ。」

みのり「そうよ。だから、いい加減泣き止みなさい。」

マルチ「そう言われても・・・涙が止まりません。ううぅ〜。」

沙希「ふふっ、しょうのない子だね。はい、ハンカチ。」

マルチ「す、すびばせん・・・ちぃ〜〜〜〜〜ん!!

羽月「鼻をかむなぁ!(^^;;」

みのり「・・・そういう羽月先輩だって、目がウルウルしてるじゃないですかぁ。」

羽月「う、うるさいなぁ!みのりちゃんだって、人のことは言えないじゃないか!」

マルチ「お二人とも、喧嘩しないでくださいよ〜。」

羽月&みのり「原因は 

 お前だろう!」

 アンタでしょう!」

マルチ「はう〜・・・。」

羽月&みのり「・・・ぷっ、あははははっ!」

長瀬「信じられん・・・。確かに、データはバックアップも含めて完全に消去されていたはずなのだが・・・。
   それとも、マルチは通常のバックアップとは別に、独自にデータを残していたんだろうか?」

沙希「そんな難しいことじゃないと思います。」

長瀬「・・・というと?」

沙希「確かに、マルチちゃんは過去のデータを失ってしまいました。
   でも、それはあくまでもデータ上でのことであって、
   記憶は・・・大切な思い出は決して忘れたりはしなかった・・・。そういうことじゃないでしょうか?」

長瀬「思い出・・・か。そうだね、君の言う通りかもしれないな。」

沙希「はい。(^^)」

セリオ「長瀬主任、私には理解できません。」

長瀬「そうか、セリオにはわからないか・・・。」

セリオ「申し訳ありません。」

長瀬「いつか・・・セリオにもわかる時が来るさ。」

セリオ「・・・努力します。」

長瀬「努力か・・・そうだね。」

 

(それから数日後・・・)

 

羽月「よしっ、出来た!」

みのり「ようやく完成ですかぁ。待ちくたびれましたよ〜。」

羽月「そう言うなよ。もう、10年以上も前の犬小屋なんだから、そのまま使えるわけないだろう。」

みのり「しかも羽月先輩、超不器用だし・・・。」

羽月「うるさいなぁ。そこまで言うなら、みのりちゃんが直せば良かったじゃないか。」

みのり「大工仕事は男がやるって決まってるんです!」

沙希「まあまあ二人とも。とにかくお疲れ様、羽月君。(^^)」

マルチ「浩之さん、お疲れ様ですぅ。(^^)」

羽月「ああ。これでお前も、雨露をしのぐ事が出来るだろう。ま、見てくれが悪いのは勘弁してくれ。(^^;;」

犬「ワン!」

マルチ「犬さん、良かったですねぇ♪」

沙希「ところで、そろそろこの子に名前をつけてあげた方がいいんじゃない?」

みのり「そうですね、いつまでも”犬さん”じゃあ変ですし・・・。」

マルチ「名前ですかぁ・・・。浩之さん、何か良い名前ありませんか?」

羽月「そうだなぁ・・・。ここは、マルチを助けてくれたおっさんに敬意を表して・・・。」

沙希「長瀬さんに敬意を表して?」

羽月「”ゲンゴロウ”はどうだ?」

みのり「絶対に却下です!!」

沙希「それはさすがに、この子がかわいそうよ。」

羽月「そんなこと言ったら、おっさんの立場ないぞ・・・。(^^;;」

沙希「あ・・・。(^^;;」

みのり「もう〜!ちょっとは真面目に考えてくださいよ!!」

羽月「じゃあ・・・”アイボ”なんてどうだ?」

沙希「・・・改造犬にでもするつもり?(^^;;」

羽月「いや、そんなつもりは毛頭ないが・・・。」

みのり「もう結構です!私が考えますから!」

マルチ「私もお手伝いします〜♪」

みのり「あんたにそんなこと出来るの?」

マルチ「はいっ!任せてください♪」

・・・

羽月「・・・ふぅ。」

沙希「羽月君、これで良かったの?」

羽月「ん?何が。」

沙希「うん・・・結局あの子、羽月君が引き取ることになったから・・・。」

羽月「ああ、そのことか。それなら全然構わないさ。」

沙希「でも・・・。」

羽月「犬は人間ほど長生きはしないから、コイツともいつか別れる時が来るだろうな。」

沙希「うん、そうだね・・・。」

羽月「確かにそれは悲しい事だと思う。情が移れば余計にな。
    だから、今まで俺はそんな思いをしないようにとずっと避けてきた。
    でも・・・だからって誰とも関わらずに生きていくのは、もっと悲しい事だと思わないか?」

沙希「・・・。」

羽月「あの時・・・マルチがトラックにはねられた時、そう思ったんだ。
   マルチと出会った事を、決して後悔したくないって。」

沙希「羽月君・・・うん、そうだね。」

マルチ「何のお話をしてるんですか?」

羽月「もっとも・・・コイツは何も考えてないんだろうけど・・・。(^^;;」

沙希「ふふっ、そうかもしれないね。(^^)」

マルチ「?」

沙希「マルチちゃん、みのりちゃんと一緒に名前を考えていたんじゃなかったの?」

マルチ「それが・・・”あなたにはセンスが足りないわ!”と言われてしまいました。はう〜。」

羽月「なんだ、俺と同じか。」

沙希「あはは・・・。(^^;;」

マルチ「また、私はお役に立てませんでした・・・。」

羽月「そんなことないさ。」

マルチ「そうでしょうか?」

羽月「ああ、マルチがいてくれるおかげで、俺達がどれだけ救われていることか・・・。」

沙希「そうそう、マルチちゃんの笑顔を見ていると、私達まで元気になるんだよ。」

マルチ「笑顔・・・ですか?」

羽月「マルチ、この前お前と約束したよな、”ずっと元気でいる”って。」

マルチ「は、はい・・・。」

羽月「その約束を守るためには、一つ条件が必要なんだ。」

マルチ「条件・・・。」

羽月「それは・・・マルチ、お前が俺の側でずっと笑っていてくれることだよ。」

マルチ「浩之さん・・・・・・ふ・・・」

沙希「ほらほら、言ってる側から泣いちゃだめだよ。」

マルチ「す、すみません。つい嬉しくって・・・。」

羽月「やれやれ。世話のかかる奴だな。(^^)」

 

セリオさん・・・私、セリオさんの言ってたことがわかったような気がします。

私がセリオさんと同じ事が出来なくても、それは当たり前なんですよね。

だって・・・私は私、セリオさんはセリオさんなんですから。

 

沙希「マルチちゃん、みのりちゃんが犬の散歩に行くみたいだよ。」

マルチ「あ、私も行きます〜!」

みのり「早くしないと置いて行くわよ♪」

 

それに、私もようやく自分に出来ることを見つけました。

 

羽月「よし、一緒に行くか、マルチ。」

 

この人の側で・・・ずっと笑っていること。

それが、私に出来るたった一つのことです。 

ずっと・・・ずっと・・・沙希さんと、みのりさんと・・・そして浩之さんと一緒に・・・。

 

マルチ「はい!(^^)」

 

END