羽月「そんなのって・・・ないだろ!俺は、俺はそんなつもりで元に戻すって言ったんじゃないぞ!!」

みのり「羽月先輩、落ち着いてください!」

羽月「落ち着けって?!これがどうして落ち着いていられるんだ?!!」

沙希「羽月君!!」

羽月「っ・・・悪い。取り乱した・・・。」

沙希「羽月君・・・あゆちゃんを探そうよ。」

みのり「探すと言っても、あゆさんは消えちゃったんですよ、虹野先輩。」

沙希「でも、あゆちゃんは”本来いるべき所に帰る”って言ってた。だから・・・。」

羽月「そうだよな。可能性がゼロじゃない限り、探してやらなくちゃな。」

沙希「うんっ!(^^)」

みのり「じゃあ、羽月先輩が思い当たるところを手当たり次第に探しましょうか♪」

沙希「そうね、じゃあ早速行動開始♪」

羽月「・・・・・・ありがとう。」

しかし、3人の努力も虚しく、あゆは一向に見つからなかった。
心当たりのある場所もすべて回り、3人は重い足取りで羽月宅へと戻った。

みのり「結局、見つかりませんでしたね・・・。」

沙希「うん・・・。」

羽月「2人とも今日はもういいから、家に帰れよ・・・。」

沙希「でも・・・。」

みのり「虹野先輩、今日はそっとしておいてあげましょうよ。」

羽月「俺はもう寝るから。じゃあ・・・。」

沙希「羽月君・・・。」

TRRRRRRR!! 

みのり「羽月先輩、電話が鳴ってますけど・・・。」

羽月「こんな状態で、誰と何を話せって言うんだよ・・・。ほっといてくれ。」

沙希「・・・私が代わりに出るよ?」

羽月「・・・・・・。」

沙希「はい、もしもし・・・秋月総合病院?はぁ・・・・・・。」

羽月「じゃあ俺、ホントに部屋に戻るから・・・。」

沙希「え?!羽月君、ちょっと待って!!あゆちゃんが見つかった!!」

みのり「ホントですか?!!」

羽月「あゆは・・・あゆはどこに?!!」

沙希「とにかく電話に出て。そうすればすべてわかるから。」

羽月「・・・もしもし。」

弥生「祐一君、お久しぶりね。」

羽月「や、弥生さん?お久しぶりです・・・。」

弥生「何だか元気ないわね・・・まあいいわ。今日電話をしたのはね、
    月宮あゆという娘についてあなたが何か知ってないかと思って・・・。」

羽月「あゆがそこにいるんですか?!!」

弥生「いるも何も、彼女は7年前からずっと昏睡状態なのよ。」

羽月「そんなバカな・・・。じゃあ、俺達の会っていたあゆは・・・。」

弥生「会っていた?あゆちゃんと?」

羽月「ええ。それも今日・・・。」

弥生「信じられないわね・・・。」

羽月「でも、確かにあれはあゆです!絶対に人違いなんかじゃ・・・

弥生「わかってるわ。あなたは普段いくらふざけていても、こういう事でウソをついたりしないから。」

羽月「はい・・・。」

弥生「そうねぇ・・・医者としてはこんな話認めたくないんだけど、
    あゆちゃんの”あなたに会いたい”という気持ちが形となって現れたんじゃないかしら。」

羽月「・・・ところで、どうして俺があゆを知ってると?」

弥生「実は今日、あゆちゃんが昏睡状態にもかかわらず、一言だけつぶやいたの。
    それも、あなたの名前を。」

羽月「あゆ・・・。」

弥生「現実にはあり得ない事なの。7年間、何の変化もなかった患者がいきなり喋るなんて。
    でも、もしかしたらこれがきっかけで目覚めるかも・・・と私は思ったのよ。」

羽月「それで俺に電話を?」

弥生「同姓同名なんてそうそうないでしょ?」

羽月「弥生さん、あゆに・・・あゆに会わせてもらえませんか?」

弥生「あなたならそう言うと思ったわ。祐一君、あゆちゃんの力になってあげて。」

羽月「弥生さん・・・ありがとうございます。」

弥生「でも、ひとつだけ約束してくれる?」

羽月「何でしょうか?」

弥生「あゆちゃんと面会するのはあなただけ。他の人は連れてこないでちょうだい。
    さっき電話に出た、え〜と・・・。」

羽月「沙希ちゃんのことですか?」

弥生「ええ。彼女も来たがるかも知れないけど、いくら私でもそう何人も集中治療室に
    人を入れるわけにはいかないの。わかってくれるわね?」

羽月「そうですね・・・わかりました。じゃあ、早速駆けつけますので。」

弥生「ええ、待ってるわ。じゃあ・・・。」

ガチャ。

みのり「どうだったんですか?」

羽月「あゆは・・・7年前からずっと昏睡状態だそうだ。」

沙希「じゃあ、私達が会ってたあゆちゃんは・・・。」

羽月「よくはわからないけど、それがあゆの言ってた”奇跡のかけら”の力だったんだと思う。」

みのり「自分の姿を維持していた力を失ったから・・・っていうことですか?」

羽月「たぶん・・・。」

沙希「それで、あゆちゃんに会いに行くの?」

羽月「ああ。ただし、俺一人で行く。」

みのり「どうしてですか?!私達だって・・・」

羽月「わかってる。わかってるけど集中治療室の患者っていうのは、本来面会謝絶なんだよ。
     それを無理言って会わせてもらうんだから・・・すまん。」

沙希「みのりちゃん、羽月君も辛いんだから・・・。」

みのり「虹野先輩・・・・・わかりました。」

沙希「でもね、羽月君・・・。」

羽月「ん?」

沙希「病院には一緒に行けないけど、ここであゆちゃんを待つのは許してくれる?」

羽月「沙希ちゃん・・・。」

沙希「迷惑かも知れない。でも・・・待ちたいの。羽月君が帰ってくるのを。
    そして・・・・・・あゆちゃんが一緒に帰ってくるのを・・・。」

羽月「・・・・・・。」

みのり「虹野先輩・・・私も一緒に待ちます!」

羽月「・・・・・・ちゃんと家には連絡しておけよ。」

みのり「羽月先輩・・・。(^^)」

沙希「帰ってくるよね?あゆちゃんの元気な姿・・・また見れるよね?」

羽月「バカ・・・当たり前だろ。」

沙希「うん・・・そうだよね。ゴメンね、弱気なこと言って。」

羽月「じゃあ、行ってくるから。」

沙希&みのり「行ってらっしゃい!」

弥生「・・・この部屋よ。それじゃあ私は宿直室にいるから。」

羽月「ありがとうございます。m(_ _)m」

集中治療室。何に使うのかわからない機械が所狭しと並ぶ中、
一つだけ置かれたベッドの上に月宮あゆは眠っていた。
彼女との思い出はすべて幻であったかのように、彼女は永遠の時を夢の世界で過ごしていた・・・。

羽月「あゆ・・・探したんだぞ。」

あゆ「・・・・・・。」

羽月「こんな所で何やってるんだよ・・・。
     沙希ちゃんも、みのりちゃんも、みんなあゆの事を心配してるんだぞ。
    こんな結末・・・誰が望んだっていうんだ!!
     頼むから・・・目を覚ませよ、あゆ・・・。」

あゆ「・・・・・・。」

羽月「あゆ・・・帰ってきてくれよ・・・・・・

あゆ「・・・・・・クン・・・。」

羽月「ん・・・。」

あゆ「祐一君、起きてよ。」

羽月「ん・・・あ、あゆ?お前目が覚めたのかっ!!」

あゆ「ううん。ここは、夢の世界だから・・・。」

羽月「夢・・・ということは、あのまま寝ちまったのか。」

あゆ「祐一君、相当疲れてたみたいだから。」

羽月「・・・。」

あゆ「祐一君、ゴメンね。」

羽月「どうして謝る・・・。」

あゆ「だって・・・みんなにいっぱい心配かけたから。」

羽月「ホントにそう思ってるんなら、戻って来いよ!!」

あゆ「それは・・・できないんだよ。」

羽月「どうして?!」

あゆ「ここが、ボクの本当の居場所だから。7年間ベッドで眠り続けてるボクが、本当のボクだから。」

羽月「それじゃあ、これがお前の本当の願いだって言うのか?!」

あゆ「ボクだって、祐一君と・・・みんなと一緒にいたいよ!でも・・・。」

羽月「・・・でも?」

あゆ「もう奇跡は起きないんだよ。だからボクは、これからもずっとこの夢の世界にいるんだよ。」

羽月「・・・・・・。」

あゆ「だけど・・・祐一君がここにいてくれれば、ボクも寂しくないと思うんだ。」

羽月「・・・何だって?」

あゆ「祐一君、ここでずっとボクと一緒にいようよ!ボク、ひとりぼっちはもういやだよ!」

パシィッ!!

あゆ「痛っ!ゆ、祐一・・・君?」

羽月「勝手なこと言うなよ。あゆはそれで本当に良いのか?
    沙希ちゃんやみのりちゃんは、お前が帰ってくるのを待ってるんだぞ!」

あゆ「沙希ちゃん・・・みのりちゃん・・・。」

羽月「ひとりが寂しいんだったら、帰って来ればいいじゃないか。」

あゆ「でも、奇跡はもう・・・。」

羽月「そうやって奇跡にばかり頼るなよ。」

あゆ「え・・・?」

羽月「奇跡が起こせないんなら、自分の力で目覚めればいいんじゃないか!」

あゆ「そんなの・・・無理だよ。」

羽月「無理じゃない!いいか、お前は目覚め方がわからないだけなんだ。」

あゆ「うぐぅ、ボクそんなにバカじゃないもん。」

羽月「バカなんだよお前は。どうしてやる前から諦める?試してみなくちゃわからないだろ?
    あゆ1人では無理だったかも知れない。でも、俺と2人だったら出来るかも知れないじゃないか!」

あゆ「祐一君・・・。」

羽月「そういうわけだから、俺が起きるのを手伝ってやる。」

あゆ「手伝うって・・・どうやって?」

羽月「一緒にこの世界から出るんだよ。」

あゆ「そんなことできるの?」

羽月「やってみるさ。それしか方法がないからな。」

あゆ「祐一君・・・どうしてそこまでしてくれるの?」

羽月「あゆ、お前が7年前に言った最初の願い事を覚えているか?」

あゆ「え?う、うん。確か・・・。」

羽月「”ボクのこと、忘れないでください。冬休みが終わって、自分の街に帰ってしまっても、
      ときどきでいいですから、ボクのこと、思い出してください。”」

あゆ「そうだったね・・・。でも、よくそこまで覚えてたね。」

羽月「約束だったからな。」

あゆ「うん・・・。」

羽月「でも俺は薄情だからな。身近にいないヤツの事はすぐに忘れてしまう。」

あゆ「そんなぁ、ヒドイよぉ!」

羽月「だから・・・ずっとそばにいろ。」

あゆ「・・・え?」

羽月「俺があゆの事を忘れてしまわないように、ずっとそばにいろ。
    居場所が無いのなら,俺のそばに居場所を作ればいい。だから・・・一緒にいよう。」

あゆ「祐一君・・・もしかしてもの凄く恥ずかしいこと言ってる?」

羽月「わ、わかってるなら聞くな!!」

あゆ「ご、ごめん・・・。(^^;;」

羽月「全く・・・こんな事二度と言わないからな。」

あゆ「祐一君・・・ありがとうね。ボク、頑張ってみるよ!」

羽月「そっか。それじゃあ、あゆの本当の願いを聞かせてくれるか?」

あゆ「ボクは・・・・・・・・・

羽月「んっ・・・・・・夢、か・・・。」

あゆ「うん。夢はもう・・・終わったんだよ。」

羽月「・・・あゆ。」

あゆ「おはよう、祐一君・・・。」

羽月「おはようじゃないぞ、7年も寝坊して・・・。」

あゆ「ふふっ、ホントだね。・・・あ、あれ?おかしいな。悲しくなんかないのに、すごく嬉しいはずなのに、
    涙が・・・涙が止まんないよ。(;_;)」

羽月「良かった・・・ホントに良かったな、あゆ。」

ギュッ・・・。

あゆ「祐一君、く、苦しいよ・・・。手を緩めてよ。」

羽月「わ、悪い。つい嬉しくって。(^^ゞ」

あゆ「・・・。」

羽月「・・・。」

あゆ「祐一君・・・。」

羽月「あゆ・・・。」

弥生「はい!二人ともそこまで〜!」

ビクゥッ!!!

羽月「や、や、弥生さん!いつからそこに?!!」

弥生「二人の目が覚めるちょっと前かしら。(^^)」

あゆ「また、夢の世界にUターンするかと思った・・・。」

弥生「驚かせてしまったみたいでごめんなさいね。
    でも、あゆちゃんはまだ安静にしてなくちゃいけないから。」

羽月「・・・そうですね。すいません、余計な心配をおかけしてしまって。」

弥生「いいのよそんな事。それよりも・・・今回は君のこと見直したわよ。(^^)」

羽月「や、やめてくださいよ!(*^^*) とにかく今日はこれで帰りますから、あとはお願いします。」

弥生「そう?じゃあ気をつけて帰るのよ。」

羽月「はい。それじゃ、あゆ・・・早く元気になれよ。」

バタン。

あゆ「祐一君・・・本当にありがとう。」

(それからいくつかの月日が流れて・・・)

あゆ「弥生さん、今までお世話になりました。」

弥生「もう2度と、ここに戻ってくるような事のないようにね。」

あゆ「うんっ!」

みのり「ここは網走刑務所ですか・・・。(^^;;」

あゆ「あっ、みのりちゃん。それに沙希さんも。迎えに来てくれたんだ♪」

沙希「あゆちゃん、お勤めごくろうさま。(^^)」

みのり「虹野先輩まで・・・。(^^;;」

沙希「ふふっ、冗談よ。(^^)」

あゆ「あれっ?祐一君は?」

みのり「まだ来てないんですか?私達よりも先に来ているはずなんですけど・・・。」

弥生「そうそう、あゆちゃん。」

あゆ「なあに?弥生さん。」

弥生「今度はもう邪魔したりしないから、安心していいわよ。」

あゆ「や、弥生さんのイジワル〜!(*^^*)」

弥生「ふふっ、若いっていいわよねぇ。」

あゆ「うぐぅ〜、弥生さ〜ん。」

沙希「何のこと?」

みのり「さぁ・・・。」

羽月「わ、悪い、遅れた・・・。(ゼ〜ゼ〜)」

沙希「羽月君、遅刻だよ。」

羽月「ちょっと商店街に寄ってたもんだから・・・。」

みのり「商店街で何やってたんですか?」

羽月「これ・・・あゆの出所祝い。」

みのり「そのネタはもういいです・・・。」

羽月「?」

あゆ「ボクに?もらってもいいの?」

羽月「いらないんなら弥生さんにやる。」

弥生「あら、悪いわねぇ。」

あゆ「だ、ダメだよ!ボクがもらうんだからぁ!」

 

そう。ボクは今、確かにここにいる・・・

 

弥生「冗談よ、冗談。じゃあ、私はそろそろ仕事に戻るから。」

羽月「弥生さん、ありがとうございました。」

弥生「お幸せに。(^^)」

羽月&あゆ「弥生さん!(*^^*)」

弥生「うふふっ。(^^)」

みのり「こういう時って普通、”お大事に”って言うんじゃないですか?」

沙希「そうよねぇ・・・。」

あゆ「そ、それよりも、祐一君からのプレゼント、開けてもいいかなぁ?(^^;;」

 

病院のベッドの上ではなく、この青空の下、みんなと一緒に・・・

 

羽月「あ、ああ。全然構わないぞ。(^^;;」

ガサガサ・・・。

あゆ「あ・・・。」

みのり「天使のぬいぐるみですね。」

沙希「もしかして・・・7年前の?」

あゆ「ううん。前のよりずっと大きいけど・・・これもまた願い事を叶えてくれるのかな?」

 

それが、ボクの本当の願いだったから・・・

 

羽月「バカかお前は。」

あゆ「うぐぅ〜、祐一君ひどいよ・・・。」

羽月「奇跡にばかり頼るなって言っただろ?」

あゆ「あ・・・そうだったね。」

羽月「その代わり、別の機能が一つだけ付いているけどな。」

沙希「空を飛ぶとか?」

羽月「飛ぶかっ!(^^;;」

みのり「鼻を押すと、その人そっくりになるとか?」

羽月「そんなのあったら俺が欲しいわっ!(^^;;」

あゆ「う〜ん・・・それじゃあ一体なんだろう?」

 

ここが、ボクの本当の居場所になったから・・・

 

羽月「ふぅ〜、この人形はだな、あゆが落ち込んだり、元気がないときに、背中のボタンを押すと・・・」

あゆ「背中のボタン?これかな・・・ポチッ。」

羽月「ここで押すんじゃないっ!!」

あゆ「うぐぅ、だって〜。(;_;)」

沙希「・・・・・・。」

みのり「・・・・・・。」

あゆ「・・・・・・。」

みのり「羽月先輩、これってかなり恥ずかしくありません?」

沙希「横で聞いてるだけで、顔が火照っちゃうね。(*^^*)」

羽月「まさかここで押すとは・・・。(;_;)」

あゆ「で、でも、すっごく元気出たよ!ありがとう、祐一君。(*^^*)」

 

だから・・・ボクにはもう、奇跡なんて必要ない。

 

羽月「今度からは、他に誰もいない時に聞くんだぞ、いいな!」

沙希「え〜、いいじゃない。また聞かせてくれたって。」

みのり「そうそう。減るもんじゃないんですから、ケチケチしないでくださいよ。」

羽月「あのなぁ。(^^;;」

 

だって・・・。

 

あゆ「祐一君・・・。」

羽月「ん?」

”それじゃあ、あゆの本当の願いを聞かせてくれるか?”

”ボクは・・・祐一君と一緒にいたい。”
   ”一緒に遊んで、一緒にたい焼き食べて、そして・・・一緒に笑っていたい。”

”わかった。それがお前の願いなら、俺がかなえてやる。だから・・・一緒に帰ろう。”

”うんっ!”

あゆ「ただいまっ!!(^^)」

 

これからは、ずっと笑顔でいられるんだから。

 

(おしまい)

 

あとがきへ続く?